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異文化間教育とは何か ―― グローバル人材育成のために
多言語多文化社会としての日本のなかで,アメリカの言語文化から生まれた異文化コミュニケーションや,異文化理解が語られることは多い。しかし,複数の言語や文化の間を往来し,自己のまなざしや存在そのものを他者へ開き,寛容を養う異文化間(インターカルチャー)教育はまだ十分に議論の対象となっていない。本書は,異文化間(インターカルチャー)教育の課題を人材育成との関連から明らかにし,21世紀におけるヨーロッパの言語教育の理念を解明する。2013年4月に京都大学で開催された国際研究集会「真のグローバル人材育成を目指して―その理念と実践」での報告並びに関連論文を収録。
日本語教育学としてのライフストーリー ―― 語りを聞き,書くということ
インタビューという語り手と聞き手の相互行為をもとに共同で産出される個人の「ライフストーリー」について,「日本語教育学」の分野からその研究意義をまとめた画期的論文集。日本語教育におけるライフストーリー研究は,2000年代から浸透していったが,その普及の背景には,従来の実証主義的研究に対する反省がある。ライフストーリーインタビューをどのように行うか。だれが,何のために,どのように,それを考察し,記述するのか。これらの諸問題について答えを見出そうとする意欲的論文9編のほか,ライフストーリー研究の第一人者,桜井厚氏へのインタビューも収録。
『マイノリティの社会参加――障害者と多様なリテラシー』
本書のテーマは「多様なリテラシー」である。全編を通して「リテラシー」とは何かを考え,マイノリティ言語話者のリテラシーと社会参加を考える。本書では,特に「障害」を採りあげ,その世界の多様で,複雑,課題に満ちて,しかも豊かなリテラシーを見,教育と社会のあり方を考える。「障害=福祉の対象」ではなく,いきいきと自身の個性を生かしつつ社会に参加する,十全たる市民が育つことこそ,望まれる社会の姿であろう。そして,それは適切な教育のあり方,社会のあり方によって実現可能なはずである。
『「移動する子ども」という記憶と力――ことばとアイデンティティ』
「移動する子ども」は,親や支援者,まわりの子どもたちとどのような関係性の中でことばを習得したのか――。いかに効率的にことばの学習をするかではない。複数言語を学んだ経験が人生の中でくりかえし意味づけられ,「移動する子ども」という記憶として人を形成していく。当事者が語る経験と記憶は,社会を生き抜く力の源泉となる。
『複言語・複文化主義とは何か――ヨーロッパの理念・状況から日本における受容・文脈化へ』
「ヨーロッパ言語共通参照枠」(CEFR)の背景にある複言語・複文化主義について,その源流を辿りつつ,欧州と日本等の状況を概観。それぞれの言語教育分野における受容と文脈化の現状について,様々な立場からの論考を収録。