『リテラシーズ』14 [2014年2月刊]
特集:言語教育学としてのライフストーリー研究

目次

巻頭言
日本語教育におけるライフストーリー研究の現在――その課題と可能性について/三代純平(本特集号企画委員長,武蔵野美術大学)
寄稿
あなたはライフストーリーで何を語るのか――日本語教育におけるライフストーリー研究の意味/川上郁雄(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
学習者・教師の「語り」を聞くということ――「日本語教育学」が「学」であるために/河路由佳(東京外国語大学大学院総合国際学研究院)
わからない原因を考える――ライフストーリーのより深い理解に向けて/中山亜紀子(佐賀大学)
日本語教育を実践する私がライフストーリーを研究することの意味――元私費留学生のライフストーリーから/佐藤正則(早稲田大学日本語教育研究センター)
論文
「言語教育学としてのライフストーリー研究」において調査者の構えを記述する意味――「在日コリアン」教師の研究からの示唆/田中里奈(山口福祉文化大学)
言語教育におけるライフストーリー研究の意義とは何か――複数言語環境で成長する子どもを巡る「まなざし」に着目して/中野千野(早稲田大学大学院日本語教育研究科)

巻頭言

日本語教育におけるライフストーリー研究の現在――その課題と可能性について
三代 純平(本特集号企画委員長,武蔵野美術大学)
キーワード:ライフストーリー研究,日本語教育学,アイデンティティ,自己言及的記述,構え
概要: 本稿では,日本語教育におけるライフストーリー研究がいかに行われてきたかを概観する。日本語教育におけるライフストーリー研究は,2000年代前半に開始され,2000年代後半から,浸透していった。その普及の背景には,従来の実証主義的研究に対する反省がある。
現在の日本語教育におけるライフストーリー研究の問題点として以下の2点が指摘できる。(1) 日本語教育におけるライフストーリー研究は調査者の主観や立場が研究に与えている影響を十分に描いてはいない。(2) 日本語教育学としてライフストーリー研究が確立されていない。そこで,本稿では,日本語教育研究者が自己言及的にライフストーリー研究を行うことによって,日本語教育学としてのライフストーリー研究の意味が明らかになる可能性を指摘する。
Entry: 三代純平(2014).日本語教育におけるライフストーリー研究の現在―その課題と可能性について『リテラシーズ』14,1-10.http://literacies.9640.jp/vol14.html#miyo[bibTeX
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寄稿

あなたはライフストーリーで何を語るのか――日本語教育におけるライフストーリー研究の意味
川上 郁雄(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
キーワード:ライフストーリー研究,ライフストーリー・インタビュー,「日本語教育学的語り」,社会的現実
概要: 本稿は日本語教育におけるライフストーリー研究の意味を根本から問う研究である。
近年,日本語教育においてはライフストーリー・インタビューという研究方法を採る研究が増えている。しかし,日本語教育におけるライフストーリー研究の意味を検討した研究はほとんどない。そこで本稿は,その背景に何があるのか,また調査方法と調査者との関係,インタビューから析出される「社会的現実」とは何か,そして,調査者は何をめざしてライフストーリー研究を行うのか,ライフストーリー研究を通じた「日本語教育学的語り」と何か,さらに,ライフストーリー研究の限界は何か等を検討した。
Entry: 川上郁雄(2014).あなたはライフストーリーで何を語るのか―日本語教育におけるライフストーリー研究の意味『リテラシーズ』14,11-27.http://literacies.9640.jp/vol14.html#kawakami[bibTeX
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Telling Lifestories: The significance of lifestory researches in Japanese language education
KAWAKAMI, Ikuo (Graduate School of Japanese Applied Linguistics, Waseda University)
PDF English [Abstract]
学習者・教師の「語り」を聞くということ――「日本語教育学」が「学」であるために
河路 由佳(東京外国語大学大学院総合国際学研究院)
キーワード:ライフストーリー,ライフヒストリー,オーラルヒストリー,聞き取り調査,日本語教師研究
概要:  近年,日本語教育をめぐる調査研究において「ライフストーリー・インタビュー」の有効性が話題にのぼるようになった。教師や学習者の「語り」に耳を傾けることで,私たちは何を解明することができるだろうか。本稿では,これまで筆者が耳を傾けて来た教師や学習者の「語り」から得られた成果を整理して示した後,「ライフストーリー・インタビュー」の可能性と課題を検討し,特に日本語教師研究の可能性への期待を述べる。
Entry: 河路由佳(2014).学習者・教師の「語り」を聞くということ―「日本語教育学」が「学」であるために『リテラシーズ』14,29-44. http://literacies.9640.jp/vol14.html#kawaji [bibTeX
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What Can We Know from Listening to the Narratives of Learners and Teachers? : In order to be literate“ Teaching Japanese for Speakers of Other Languages (TJSOL)”
KAWAJI, Yuka (Institute of Global Studies, Tokyo University of Foreign Studies)
PDF English [Abstract]
わからない原因を考える――ライフストーリーのより深い理解に向けて
中山 亜紀子(佐賀大学)
キーワード:ライフストーリー,学部留学生,自己物語,マスターナラティブ,ラポール
概要: 日本語教育学では,ライフストーリーを使った研究への関心が高まっているが,インタビューすればいつでもストーリーが書けるわけではない。本稿では,筆者の失敗したケースを取り上げ,インタビューの内容がわからず,ストーリーが書けなかった原因について考察した。本稿では,筆者が調査協力者の背景を十分に理解していなかったこと,ストーリーの作成方法の問題,さらに調査協力者が語れなかった可能性の3 点について論じた。
Entry: 中山亜紀子(2014).わからない原因を考える―ライフストーリーのより深い理解に向けて『リテラシーズ』14,45-54. http://literacies.9640.jp/vol14.html#nakayama [bibTeX
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Reflections on a Failed Interview: How a researcher can better understand a life story
NAKAYAMA, Akiko (Saga University)
PDF English [Abstract]
日本語教育を実践する私がライフストーリーを研究することの意味――元私費留学生のライフストーリーから
佐藤 正則(早稲田大学日本語教育研究センター)
キーワード:対話性,自己言及,アイデンティティ・ワーク,構え,応答責任
概要: 本稿ではライフストーリー・インタビューの対話性に注目し,語り手としての元留学生の語りと,聴き手としての私の変容を記述する。初めに日本語教師としての私がライフストーリー研究を始めた経緯を記述する。事例として,元留学生仁子さん(本人希望の仮名)のインタビューを読み解き,彼女のストーリーを可視化すると同時に私の構えの変化を明らかにする。最後にここまでの記述を踏まえ,日本語教育を実践する私がライフストーリーを研究することの意味を考察する。
Entry: 佐藤正則(2014).日本語教育を実践する私がライフストーリーを研究することの意味―元私費留学生のライフストーリーから『リテラシーズ』14,55-71. http://literacies.9640.jp/vol14.html#sato [bibTeX
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The Significance of My Conducting Life Story Research as a Japanese Language Education Practitioner
SATO, Masanori (Center for Japanese Language, Waseda University)
PDF English [Abstract]

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論文

「言語教育学としてのライフストーリー研究」において調査者の構えを記述する意味――「在日コリアン」教師の研究からの示唆
田中 里奈(山口福祉文化大学)
キーワード:研究者のポジショナリティ,ライフストーリーの記述,自己言及,調査者の「構え」,「在日コリアン」日本語教師
概要: 本稿は,筆者がこれまで行ってきた在韓の「在日コリアン」日本語教師のライフストーリー調査での経験を批判的に問い直すことを通じて,「言語教育学としてのライフストーリー研究」のあり方を論じるものである。「日本語教育を専門とする日本人」が「在日コリアン」を研究対象とすることにどのような意味があるのかという問いかけをきっかけに,筆者のライフストーリー研究やその記述に対する姿勢がどのように変化したのかを取り上げ,研究者のポジショナリティを記述しない「言語教育学としてのライフストーリー研究」が内包する問題点と排除してしまいうる研究の可能性について述べる。
Entry: 田中里奈(2014).「言語教育学としてのライフストーリー研究」において調査者の構えを記述する意味―「在日コリアン」教師の研究からの示唆『リテラシーズ』14,73-83. http://literacies.9640.jp/vol14.html#tanaka [bibTeX
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The Meaning of Describing Researcher’s Stance in“ Life Story Research as Language Pedagogy”
TANAKA, Rina (Yamaguchi University of Human Welfare and Culture)
PDF English [Abstract]
言語教育におけるライフストーリー研究の意義とは何か――複数言語環境で成長する子どもを巡る「まなざし」に着目して
中野 千野(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
キーワード:まなざし,ライフストーリー,複数言語環境,自己言及的記述,文化的営為
概要: 本稿では,複数言語環境で成長したひとりの女性のライフストーリーに立ち現れる「まなざし」に着目し,ことばの学びとその関係性を明らかにした。その結果〈ライフストーリーのインタビューの場〉は〈関係性を育む語りの場〉へと変容し,そこではことばと〈生〉を深くまなざす「まなざし」が形成されていた。その意味に双方が〈自覚的〉に向き合い省察していくならば,その過程そのものがことばの学びへの「まなざし」を育む過程であり〈文化的営為〉である。そこに言語教育における〈語りの意義〉が存在するのである。
Entry: 中野千野(2014).言語教育におけるライフストーリー研究の意義とは何か―複数言語環境で成長する子どもを巡る「まなざし」に着目して『リテラシーズ』14,85-101. http://literacies.9640.jp/vol14.html#nakano[bibTeX
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What Is the Meaning of Life Story Research in Language Education?
NAKANO, Chino (Graduate School of Japanese Applied linguistics, Waseda University)
PDF English [Abstract]

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