リテラシーズ・ニュース

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【投稿募集】『リテラシーズ』22巻(2018年4月末日締切)
特集:グローバリゼーションと言語教育

企画委員長: 牲川波都季(リテラシーズ編集委員,関西学院大学)

日経連が「グローバル社会に貢献する人材の育成」を提言したのは1997年のことだが,その後,2009年から文部科学省がグローバル関連三事業を実施するに伴い,言語教育分野では「グローバル人材育成」「グローバル化の進展」が枕詞のように使われるようになった。その多くは,「グローバル化の進展」により,国境を越えた人々の移動が増大しており,こうした時代に活躍できる「グローバル人材育成」が重要だ,したがってそれに資する言語教育が必要かつ意義をもつと主張している。

しかし,そもそも「グローバル化の進展」や「グローバル人材育成」とは,当然に目指すべき目標なのだろうか。誰にとってどのように意味のある目標なのか。たとえば,文部科学省は「グローバル人材育成推進事業」の募集要項の中で,「我が国経済が新たな成長軌道へと再浮上するため」と述べており,明白に日本経済に利する人材育成を目指しているとわかる。グローバリゼーションは,国境を曖昧化する動きのようだが,実態は,各国が人材を用意することで,グローバルな規模に広がった経済活動を支え,その利益を各国に還元しようとする動きを伴っているだろう。また,「グローバル人材育成」が成功すればするほど,そうした人材になれる者となれない者との貧富の差は広がってしまう。

リテラシーズ研究会は,前身の「21世紀の『日本事情』」研究会から,自明視された国民国家の枠組みを問い直し,そうした枠組みに依らない言語教育の考え方を模索してきた。国境を跨いで人々が移動するグローバリゼーションの時代は,本研究会の理念を現実化しやすい時代のようだ。一方で,人はすでに常に他者とともに生きてきたはずだと想定することで,認識論的に国民国家の力を削ごうとしてきた本特集企画者のような立場からすれば,現代をことさらに,異質な他者との関わりが増す時代と捉える必要はないと言うこともできる。しかしこうした立場設定は,グローバリゼーションが生む構造的格差の問題を覆い隠すことにもつながらないか。

言語教育はグローバリゼーションの流れにいかに関与すべきか。この問いに応えることは,誰のためのどのような言語教育を目指すのかという自身の立場を明らかにすることでもある。言語教育の未来を見晴るかしつつ,グローバリゼーションと言語教育の関係を改めて考える論考を求める。

  • 投稿締切: 2018年4月30日(必着)
  • 掲載号: 『リテラシーズ』第22巻(2018年7月発行予定)
  • 投稿案内: 『リテラシーズ』投稿規定・執筆要領
    • ただし本特集について分量は,1編につき,和文の場合40字×40行で20枚以内,英文の場合14,000words以内(いずれも論題,概要,キーワード,図表,注,文献等を含む)とする。
  • お問い合わせ: literacies@9640.jp(リテラシーズ編集委員会事務局)

投稿原稿は,リテラシーズ編集委員会にて厳正な審査のうえ採否を決定し,投稿者全員に査読結果を査読コメントとあわせてお送りします。過去の論文はバックナンバー(全文)をご覧ください(第22巻では,特集企画以外の「ことば・文化・社会の言語教育へ」のコンセプトに基づく,意欲的な提案も引き続き募集しています。こちらについては,通常の執筆要領・投稿規定に従います)。

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新刊:「リテラシーズ」叢書 ―― ことば・文化・社会の言語教育への新たな方向を指し示す

4 異文化間教育とは何か ―― グローバル人材育成のために

多言語多文化社会としての日本のなかで,アメリカの言語文化から生まれた異文化コミュニケーションや,異文化理解が語られることは多い。しかし,複数の言語や文化の間を往来し,自己のまなざしや存在そのものを他者へ開き,寛容を養う異文化間(インターカルチャー)教育はまだ十分に議論の対象となっていない。本書は,異文化間(インターカルチャー)教育の課題を人材育成との関連から明らかにし,21世紀におけるヨーロッパの言語教育の理念を解明する。2013年4月に京都大学で開催された国際研究集会「真のグローバル人材育成を目指して―その理念と実践」での報告並びに関連論文を収録。


  • 西山教行,細川英雄,大木充(編)
  • 2015年10月刊行[くろしお出版WEB
  • 定価:2,400円+税
  • A5判/248ページ

目次

第1部
序 今,なぜ「ことば・文化・アイデンティティ」か 細川英雄
第1章 異文化間教育とは何か フランシス・カルトン
第2章 「共に生きる」社会形成とその教育:欧州評議会の活動を例として 福島青史
第3章 ことば・文化・アイデンティティをつなぐ言語教育実践 細川英雄
第2部
序 異文化間教育はどのように生まれたか 西山教行
第4章 複数文化と異文化間能力 ダニエル・コスト
第5章 複言語能力の養成:大学の国際化の挑戦と課題 ダニエル・モーア
第6章 間を見つける力:外国語教育と異文化間能力 姫田麻利子
第3部
序 異文化間教育と市民性教育・グローバル教育 大木充
第7章 異文化間(インターカルチャー)市民教育:外国語教育の役割 マイケル・バイラム
第8章 グローバル教育の立場から見た異文化間と人材育成(仮) ケイツ・キップ
第9章 継承語・継承文化学習支援と異文化間教育の実践 落合知子

5 日本語教育学としてのライフストーリー ―― 語りを聞き,書くということ

インタビューという語り手と聞き手の相互行為をもとに共同で産出される個人の「ライフストーリー」について,「日本語教育学」の分野からその研究意義をまとめた画期的論文集。日本語教育におけるライフストーリー研究は,2000年代から浸透していったが,その普及の背景には,従来の実証主義的研究に対する反省がある。ライフストーリーインタビューをどのように行うか。だれが,何のために,どのように,それを考察し,記述するのか。これらの諸問題について答えを見出そうとする意欲的論文9編のほか,ライフストーリー研究の第一人者,桜井厚氏へのインタビューも収録。


  • 三代純平(編)
  • 2015年10月刊行[くろしお出版WEB
  • 定価:3,000円+税
  • A5判/304ページ

目次

序章 日本語教育学としてのライフストーリーを問う 三代純平
第1部 語りを聞く
第1章 あなたはライフストーリーで何を語るのか:日本語教育におけるライフストーリー研究の意味 川上郁雄
第2章 日本語教師・学習者そしてその経験者の「語り」を聞くということ:「日本語教育学」の探求をめぐるライフストーリー 河路由佳
第3章 ライフストーリー研究の展開と展望 桜井厚
第2部 ライフストーリー・パランプセスト
第4章 「グローバル人材」になるということ:モデル・ストーリーを内面化することのジレンマ 三代純平
第5章 ライフストーリー研究における「翻訳」の役割:言語間を移動するストーリーと語る言葉 谷口すみ子
第6章 ライフストーリーを語る意義 中山亜紀子
第7章 複言語環境で成長する子どものことばの学びとは何か:ライフストーリーに立ち現れた「まなざし」に注目して 中野千野
第8章 語り手の「声」と教育実践を媒介する私の応答責任:日本語教育の実践者がライフストーリーを研究することの意味 佐藤正則
第9章 日本語教育に貢献する教師のライフストーリー研究とは 飯野令子
第10章 日本語教育学としてのライフストーリー研究における自己言及の意味:在韓「在日コリアン」教師の語りを理解するプロセスを通じて 田中里奈

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