『リテラシーズ』16 [2015年3月刊]

目次

編集委員より
社会・コミュニティ参加をめざすことばの教育とメトロリンガル・アプローチ――複言語・複文化主義をこえて/佐藤慎司(プリンストン大学)
研究論文
大出正篤の日本語教材と速成式教授法/坂田篤義(防衛大学校)
教育研究ノート
複言語サポーターの語りにみるカテゴリーの構築――相互行為分析の視点から/徳井厚子(信州大学)
「メアリーはたけしを愛していない」――初級日本語教科書のイデオロギーについてのディスカッション/杉森(秋本)典子(カラマズー大学)
書評論文
障害当事者へのまなざしの必要性――佐々木倫子(編)『マイノリティの社会参加―障害者と多様なリテラシー』/原田大介(福岡女学院大学)
思想と方法の一体化と言語教育観の更新――細川英雄・鄭京姫(編)『私はどのような教育実践をめざすのか』/森美智代(福山市立大学教育学部)

編集委員より

社会・コミュニティ参加をめざすことばの教育とメトロリンガル・アプローチ――複言語・複文化主義をこえて
佐藤 慎司(プリンストン大学)
キーワード:社会,コミュニティ,参加,メトロリンガルアプローチ,複言語・複文化主義
概要: 外国語教育において文化を取り込むことの重要性は時代を越えてさまざまな人々によって唱えられているが,その主張の多くには共通の問題点が存在する。本稿では,まず最近注目を浴びている欧州共通参照枠(CEFR)の示す複言語・複文化主義の理念を振り返り,その問題点を指摘する。その後,その問題点を乗り越える可能性のあるメトロリンガル・アプローチ(Pennycook & Otsuji, 2010),また,そのアプローチと密接に関係のある社会・コミュニティ参加をめざす日本語教育(佐藤,熊谷,2011)を紹介し,それらの理念がどのように日本語教育のカリキュラムに取り込めるか一例を示す。
Entry: 佐藤慎司(2015).社会・コミュニティ参加をめざすことばの教育とメトロリンガル・アプローチ―複言語・複文化主義をこえて『リテラシーズ』16,1-11.http://literacies.9640.jp/vol16.html#sato
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Language Education for the Global Citizen and Metrolingual Approach: Beyond Purilingualism
SATO, Shinji (Princeton University)
PDF English [Abstract]

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研究論文

大出正篤の日本語教材と速成式教授法
坂田 篤義(防衛大学校)
キーワード:直接法,対訳法,速成式教授法,訳注本,直接法イデオロギー
概要: 大出の速成式教授法は,学習者に予習用として対訳教科書を持たせるが,教室では翻訳に触れさせず,直接法による教室活動を基本とする方法だった。しかし,華北では,大出の教科書が使われる一方,教室では大出の趣旨とは異なり,学習者の母語を多用する教室が多く,大出の速成式教授法が対訳法であるという誤解を招く一因となった。また,長沼に代表されるような,語義の説明のため必要に応じて母語を用いても直接法の精神に反しないという考えが支持され言及されることが少なく,翻訳を極力排除する直接法の言説に圧倒され,訳注本を予習用に持たせる速成式教授法が,対訳法の範疇に入れられる要因となった。
日本語教育辞典の大出正篤の項目には「対訳法実践者として直接法批判を行った」とあるが,大出の教室活動はあくまで直接法によるものであり,直接法そのものを批判したわけではなく,日本精神を日本語で初等教育から伝えようとすることが逆効果であること,そして,山口の主張するような純然たる直接法を初等教育から採り入れたとしても,華北や南方占領地では成果が見込めないことを,満州での経験を基に主張した。
直接法による外国語教育としての日本語教育が国語教育へ橋渡しの役割を果たした台湾や朝鮮植民地とは異なり,華北では,日本語教育の時間数も少なく,人材も手薄で,直接法による初等教育への貢献は植民地とは比べようもなく低かった。
大出に,直接法イデオロギーがなかったわけではないが,直接法イデオロギーと距離を保ちながら,成人以上の多様な学習者のために開発した教材や教授法,そして,日本語教育とその普及に関する様々な提言は,学習者の権利が重視され,多様な学習ニーズへの対応が課題となっている現代の日本語教育から見ても学ぶべき点が多い。
Entry:坂田篤義(2015).大出正篤の日本語教材と速成式教授法『リテラシーズ』16,12-24. http://literacies.9640.jp/vol16.html#sakata
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Quick Mastery Method and Materials of Japanese Language Education by Ooide Masahiro
SAKATA, Atsuyoshi (National Defense Academy of Japan)
PDF English [Abstract]

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教育研究ノート

複言語サポーターの語りにみるカテゴリーの構築――相互行為分析の視点から
徳井 厚子(信州大学)
キーワード:複言語サポーター,カテゴリー,語り,外国人支援
Entry: 徳井厚子(2015).複言語サポーターの語りにみるカテゴリーの構築―相互行為分析の視点から『リテラシーズ』16,25-32. http://literacies.9640.jp/vol16.html#tokui
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The Categorization in the Interview Discourse of Plurilingual Supporters: From the perspective of interaction analysis
TOKUI, Atsuko (Shinshu University)
PDF English [Title & Keywords]
「メアリーはたけしを愛していない」――初級日本語教科書のイデオロギーについてのディスカッション
杉森(秋本) 典子(カラマズー大学)
キーワード:教科書,イデオロギー,呼称,人種差別,ステレオタイプ
Entry: 杉森(秋本)典子(2015).「メアリーはたけしを愛していない」―初級日本語教科書のイデオロギーについてのディスカッション『リテラシーズ』16,33-45. http://literacies.9640.jp/vol16.html#sugimori
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“Mary is not in love with Takeshi”: Discussions about ideologies in an elementary Japanese textbook
SUGIMORI, Noriko Akimoto (Kalamazoo College)
PDF English [Title & Keywords]

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書評論文

障害当事者へのまなざしの必要性――佐々木倫子(編)『マイノリティの社会参加― 障害者と多様なリテラシー』
原田 大介(福岡女学院大学)
キーワード:マイノリティ,リテラシー,当事者,障害,社会,参加
Entry: 原田大介(2015).障害当事者へのまなざしの必要性―佐々木倫子(編)『マイノリティの社会参加―障害者と多様なリテラシー』『リテラシーズ』16,46-50. http://literacies.9640.jp/vol16.html#harada
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Need to Focus on the Person with Disabilities: Sasaki, M. (Ed.). Minority no shakai sanka: Shōgaisha to tayō na literacy.
HARADA, Daisuke (Fukuoka Jo Gakuin University)
PDF English [Title & Keywords]
思想と方法の一体化と言語教育観の更新――細川英雄・鄭京姫(編)『私はどのような教育実践をめざすのか』
森 美智代(福山市立大学教育学部)
キーワード:言語教育観,教育実践,国語教育,日本語教育,他者
Entry: 森美智代(2015).思想と方法の一体化と言語教育観の更新―細川英雄・鄭京姫(編)『私はどのような教育実践をめざすのか』『リテラシーズ』16,51-60. http://literacies.9640.jp/vol16.html#mori
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Unification of Thought and Method, and Renewed View of Language Education: HOSOKAWA, Hideo & CHUNG, Kyunghee. (2013). What Kind of Educational Practice I Aim For. Yokohama: Shumpusha Publishing.
MORI, Michiyo (Faculty of Education, Fukuyama City University)
PDF English [Title & Keywords]

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