『リテラシーズ』9 [2011年8月刊]

論文

「日本語=日本人」という規範からの逸脱――「在日コリアン」教師のアイデンティティと日本語教育における戦略
田中里奈(山口福祉文化大学ライフデザイン学部,
早稲田大学大学院日本語教育研究科)
キーワード:「日本語=日本人」,「在日コリアン」教師,アイデンティティ,ネイティブ,戦略
概要: 本稿は,「在日コリアン」として生まれ育った在韓日本語教師のライフストーリーから,「日本語=日本人」という規範が強い日本語教育において,その規範からの逸脱者がどのように自己を位置づけてきたのかを明らかにすることを目的とする。インタビューの結果,社会生活においては,「在日コリアン」というカテゴリーで括られたアイデンティティを拒絶しているにも関わらず,日本語教育の現場においては,日本語ネイティブの「在日コリアン」であることを強く表明していることが明らかとなった。そうした戦略を使わざるを得ない教師の前には,たとえ日本語のネイティブであっても,規範から逸脱しているために疎外されてしまう現実があるといえる。このことから,「日本人性」が付与された日本語の存在とそれを容認する日本語教育の実態が示唆された。
Entry: 田中里奈(2011).「日本語=日本人」という規範からの逸脱―「在日コリアン」教師のアイデンティティと日本語教育における戦略『リテラシーズ』9,1-10. http://literacies.9640.jp/vol09.html [bibTeX
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Deviation from the criterion of “Japanese Language = Japanese People”: Identity of a “Zainichi-Korean” educator and her strategies of positioning in Japanese language teaching.
TANAKA, Rina (Faculty of life design, Yamaguchi University of Human Welfare and Culture; Graduate school of Japanese applied linguistics, Waseda University)
PDF English [Abstract]
日本国外で成長する子どもたちにとっての日本語使用経験の意味――子どもたちはどのように日本語と向き合ってきたのか
尾関史(早稲田大学日本語教育研究センター)
深澤伸子(タマサート大学教養学部)
牛窪隆太(早稲田大学大学院日本語教育研究科)
キーワード:日本国外で成長する子ども,複数言語,日本語使用経験,実感,ライフストーリー
概要: 本研究は,日本国外で成長した若者がどのように日本語使用を経験してきたのかを,彼らの語りから明らかにすることを目的とした。語りから,他者との関係の中で実感に支えられた日本語使用経験をいかに重ねていけるかということが,彼らの日本語の学びや生き方を大きく左右していることがわかった。それゆえ,日本語教育の現場に求められるのは,自分が言いたいことや伝えたいこと,また,ありのままの自分を表現し,それが相手にも理解されたという実感に支えられた日本語使用経験の場を創っていくことであろう。
Entry: 尾関史,深澤伸子,牛窪隆太(2011).日本国外で成長する子どもたちにとっての日本語使用経験の意味―子どもたちはどのように日本語と向き合ってきたのか『リテラシーズ』9,11-20. http://literacies.9640.jp/vol09.html [bibTeX
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The meanings of Japanese language usage of children growing up outside Japan: How they confront japanese language
OZEKI, Fumi (Center for Japanese Language, Waseda University), FUKAZAWA, Shinko (Graduate School of Japanese Studies program, Thammasat University), USHIKUBO, Ryuta (Graduate school of Japanese applied linguistics, Waseda University)
PDF English (Abstract)
メトロリンガリズムと日本語教育――言語文化の境界線と言語能力
尾辻恵美(シドニー工科大学)
キーワード:メトロリンガリズム,多言語・多文化,アイデンティティ,言語能力
概要: 本稿は,オーストラリアの職場における日本人とオーストラリア人の会話を通しての言語・文化・エスニシティ・アイデンティティの構築過程を検証し,その結果をもとに,グローバル社会における言語能力,言語教育のあり方について考察する。特に,モノリンガル的な「日本語」を他の言語文化から切り離した教育ではなく,メトロリンガルとして学習者自身に合った言語環境を構築できる能力を養成する言語教育を提案する。メトロリンガリズムとは固定・規範的な言語文化理解と,またそれを打ち破る動的な理解の相互関係から生まれる言語使用の場であり,メトロリンガル的な視野を踏まえた「言語能力」「言語教育理念」がグローバル社会における言語教育に必要であると提唱する。
Entry: 尾辻恵美(2011).メトロリンガリズムと日本語教育―言語文化の境界線と言語能力『リテラシーズ』9,21-30. http://literacies.9640.jp/vol09.html [bibTeX
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Metrolingualism and Japanese language education: Linguistic competence across borders.
OTSUJI, Emi (University of Technology, Sydney)
PDF English (Abstract)
言語の境界を生きる――「母語」「母国語」「外国語」をめぐる言語意識から
鄭京姫(早稲田大学大学院日本語教育研究センター)
キーワード:中国朝鮮族日本語学習者,言語意識,境界,ライフヒストリー,アイデンティティ
概要: 本稿は,「母語」「母国語」「外国語」をめぐる中国朝鮮族日本語学習者の言語意識をライフヒストリーインタビューから聞き,考察を行ったものである。そこには,3つの言語に対する葛藤やアイデンティティの揺れが語られていた。しかし,その揺れを乗り越え,そのどれも「完璧」とは言えない互いの言語を補い合いながら生きる姿も見られた。さらに,「言語の境界」を生きること,「自分」にとって意味のある言語で生きることの重要性が語られ,ことばをアイデンティティの観点から捉え直すことの必要性が示唆された。
Entry: 鄭京姫(2011).言語の境界を生きる―「母語」「母国語」「外国語」をめぐる言語意識から『リテラシーズ』9,31-40. http://literacies.9640.jp/vol09.html [bibTeX
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Living on the ‘ boundaries of language’?: From language awareness about ‘mother tongue’ ‘native language’ and ‘foreign language’
CHUNG, Kyunghee (Center for Japanese Language, Waseda University)
PDF English (Abstract)

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