2011年度(2012年3月3日,4日)――参加者募集
〈移動する子どもたち〉のことばとアイデンティティ

趣旨

近年,幼少期より複数言語環境で成長する子どもたちが世界的に増加しています。たとえば,日本国内のJSL 児童生徒やインターナショナル・スクール等で学ぶ子どもたち,日本国外の日本人補習校や日本語学校で学ぶ子どもたち,日本国内外の国際結婚家庭の子どもたちなどが,その例です。

本国際研究集会の「移動する子ども」とは,そのような子どもたちの経験と意識のことです。つまり,成長過程で複数言語に触れ,複数言語を使用しながら成長するという経験と自らの複数言語能力についての意識そのものが「移動する子ども」であり,それは,子どもの成長や自己形成に大きな影響を与えていると考えられます。このテーマは日本国内のJSL児童生徒を対象にする日本語教育に限りません。さらに,「移動する子ども」に関するテーマは幼少期から青年期に限定されるものではなく,大学生,成人そして老齢期に及ぶ,人生そのものに関わるテーマであると考えられます。その意味で,ライフコースを視野に入れた,複数言語環境で成長した経験を持つ大人を対象にした研究も,私たちの視野に入っています。したがって,これらのテーマは,日本語教育以外の言語教育のフィールドの研究にもつながる,グローバルな課題と言えます。

以上のような視野を持ち,本国際研究集会は「移動する子どもたち」のことばとアイデンティティというテーマを設定し,招聘ゲストをお願いするとともに,一般研究発表を公募しました。日本語を学ぶ子どもたちに日本語を教えるだけではなく,子どもたちを取り巻く社会的な環境の中で,子どもたちが日本語をいかに学ぼうとしているのか,その学びと生き方を支えるために,私たちは何ができるのかを考える研究を重視しました。そのことが,「移動する子どもたち」のことばとアイデンティティというテーマを考えるのに必要な視点と思えたからです。

今回の国際研究集会が,「移動する子どもたち」をめぐる教育実践研究に少しでも貢献できる集会になることを期待しております。

2012年3月3日
「移動する子どもたち」国際研究集会実行委員会実行委員長
川上郁雄(早稲田大学大学院日本語教育研究科)

(予稿集「国際研究集会に寄せて」より)

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